~ 各種媒体での編集経験を持つコピーライターの存在価値 ~
No.023|F.その他|F-001|
一般的なコピーライターへの道とは
コピーライターになるには、養成講座や専門学校、広告代理店や制作会社のコピーライティング職、稀ながら先人コピーライターの弟子入りなどがありそうですが、いずれの出自でもない、一応コピーライターを称する当方、どんな経路やスキルを体得してコピーライターになったのか、回想してみます。
目次|INDEX
【1】社会人以前
【2】雑誌記者
【3】書籍編集者
【4】ECサイトディレター
【5】メルマガ編集長
【6】フリーペーパー編集者
【7】コンテンツマーケター
【回想】コピーライター|中村和夫の経歴
1994年~1995年
【1】社会人以前
<大学入学~卒業>
都内の某短期大学経営学科夜間部入学。同学科につきコピーライティング分野とは無関係。2回生修了後同大4年制商学部経営学科編入。同学部同学科につきこちらもコピーライティング分野とは無関係。同大卒業後は就職せず、ニュージーランド=NZに約1年、英国=UKに数ヵ月と1年以上の放浪の旅へ。
<放浪内容と習得スキル>
➊ NZでは200台以上のヒッチハイクで全土周回。英国では音楽やサッカーなど同国カルチャーを体感
… コミュニケーション能力と根性:ヒッチハイクで得た世代性別人種を超えた人々との対話力と根性
➋ 英会話力皆無ながらNZではヒッチ、農園業務、牧場居候で、UKではユースカルチャーで英語を体得
… 英語力(スラング):ヒッチ、仕事、居候、ユースカルチャーで体得したリアルなスラング英語
1995年~1997年
【2】業種:記者|媒体:雑誌
<ランディング社>
ルア-&フライ専門の釣り雑誌『ランディング』(隔月刊発行。全国版。各号平均5万部発行)の編集部入部。記者・編集者として取材/撮影/企画/編集/出版/営業/配本と写植や印画紙出力の最晩年時代の紙編集出版における工程のすべてを経験した、おそらく最後の世代(雑誌は休刊/同社は解散)。
<業務領域と習得スキル>
➊ 編集:企画/台割/取材手配/原稿依頼/原稿整理/執筆/校正校閲/ページラフ/色校
… 企画力/編集力/レイアウト/入稿(ワープロ/MO/ポジ)/写植/印画紙など出版工程の知見
➋ アポ:メーカー/ショップ/バスプロ/各種振興会/協会
… ネゴシエーション力/コネクション
➌ 取材:実釣同行/著名バスプロやメーカースタッフへのインタビュー/地域聞き込み
… 取材力/マルチタスク力(調査/聞込/撮影/実釣)/コミュ力/九州全域を担当した勤続経験
➍ 撮影:一眼レフ(通常/広角/望遠)/ポジフィルム/マウント/1取材24枚撮フィルム×6本制限
… 撮影の知見(画角/露出/シャッタースピードなど)/フィルム枚数制限内での瞬時の撮影判断
➎ 広告:出稿営業(店舗/メーカー)/広告やリリース窓口(素材手配/制作管理/見本誌送付/集金)
… 営業力/クレーム対応力(記事内容/出稿広告デザイン/広告など要望処理)/リリース選定力
➏ 配本:配本業務(配達業者約6割/自前約4割)/伝票管理/相殺集金/取材協力や取引書店開拓
… 配達力(雑誌コードなく書店や釣具店では物品扱いとなり自前配本だったため)/取引先開拓力
➐ Web :予告、参加企画、キャンペーン用に設けられた本誌ウェブサイトの企画/編集/構成
… 初期IT知見(1996年前後のインターネット黎明期においていち早くウェブサイト運用に携わる)
1998年~2000年
【3】業種:書籍編集|媒体:書籍
<木杳舎>
音楽や映画関連書籍の企画編集制作に特化した編集プロダクション。主な取引先は音楽之友社、ソニ-ミュジック、ヤマハミュージックほか。音楽や映画コンテンツの販促系企画編集を担当。一流アーティスト、大物作家、大御所映画監督など大物著名人への原稿や取材の依頼を担う(同社は現ひとま舎)。
<業務領域と習得スキル>
➊ 調査:大宅文庫/国会図書館/出版社/新聞社/各書籍やネットなどのオープンソース
… リサーチ力(広範な視野/最新トレンド感度/正確公正なソース/確度の高い根拠)
➋ 企画:音楽/映画/文壇/芸能/スポーツ業界などおもにエンタメ系を中心とした企画
… 企画力/プレゼン力
➌ アポ:業界連絡帳/日外アソシエーツ(著名人名事典)/公式(出版/レーベル/配給社)
➍ 依頼:著名人本人や所属事務所・レーベル・メーカーなど公式窓口への伺い書や依頼書
… オファー力(原稿執筆や取材協力において了承前なら「伺い書」/了承後なら「依頼書」)
➎ 執筆:自ら手掛ける場合のライティング業務/自ら取材する場合のインタビュー業務
… ライティング力/取材・インタビュー力/ヒアリング力/質問力/ロジック力
➏ 編集:原稿整理(タイトル/リード/見出し/キャプション)/校正校閲/表記統一/写真手配
➐ 庶務:御礼や詫び/献本や掲載誌の発送/資料や素材の返却管理/振込対応
… 庶務力(記事掲載後や製本出版後の処理/クレームや各種トラブル対応/各種返却/振込入金)
※参考:コンテンツが公開されるまでの流れ
2000年~2001年
【4】業種:ECサイト編集|媒体:ウェブ
<VARIETY USA, Inc.>
世界で流通する洋雑誌のオンライン販売取次専門ECサイト『US MAG』を企画制作運営するベンチャー企業の日本事務所における業務請負。Amazon日本語版オープン前後に、いち早く洋雑誌のサブスクリプション販売を行うECサイトのサイト構成やディレクションを担う(サイトはクローズ/同社は解散)。
<業務領域と習得スキル>
➊ コンテンツ:企画(読み物系などスペシャルコンテンツ)/トンマナ統一
… コンテンツ編集力
➋ 情報設計:サイト構成全般/グロナビ/大小カテゴリ/タグ/商品ジャンル整理
… IA(インフォメーションアーキテクト)的な知見
➌ UI:ページ構成/画面遷移/ワイヤー/メニュー構成(グロナビ/コーナー区分)/メタタグ
… UI(ユーザーインターフェース)的な知見
➍ UX:マイクロコピー(ボタン操作/フォーム/エラー文言)/登録や購入フォーム/FAQ
… UX(ユーザーエクスぺリエンス)的な知見
➎ 事業策定:事業計画書/会社案内策定/アライアンス提案/資金調達(出資依頼)提案書
… プレゼン力/提案力/ビジネス文書/ネゴシエーション力
2001年~2003年
【5】業種:メルマガ編集|媒体:モバイル
<ツタヤオンライン>
ウェブやモバイルと店舗を連動した配信広告通販を展開。総会員数百万人、月間総PV数千万、月間総メール配信数百万通(すべてPC/モバイル含む)を誇る巨大エンタメメディア(現TSUTAYA online/CCC)。同メディア内の生活エンタメ情報モバイルサイト『スマイル』(iモード公式)編集長に就任。
<業務領域と習得スキル>
➊ 本サイト編集:ショップクーポン/プレゼント/アンケート/待受/占い/雑貨通販
… モバイル編集力:会員/非会員、有料/無料、フォームなどステータス別の画面遷移作成入稿
➋ LP生成:受けページ編集(社内ツールで生成。本サイトにアクセスするインデックス機能)
… ツール対応力:今でいうCMS的な社内ツールでの制作/仕様変更や改修にともなう要件定義
➌ メルマガ作成:お知らせメール(毎週更新。読者の流れはメルマガ ⇒ LP ⇒ 本サイト)
… ミニマムコピーライティング力:1バイト単位で制限されるモバイル特有の究極的な文字数対応
➍ 台割表:当該号の進捗など直近的な管理(※1)
… 運用や進捗の管理力:当該号に掲載されるコンテンツのラインアップと進捗をタテ軸的に管理
➎ 編成表:全体的で横断的なシーズナル日程など中期的な管理(※1)
… 調整力:社内各コンテンツ/TSUTAYA店舗クーポン期/出稿クライアント日程をヨコ軸的に管理
➏ 表記表:全社用の表記ガイドライン(※2)
… 表記策定力:和文/カナ/英数字/全半角/記号単位/価格/固有名詞/トンマナ/禁止文言の整理統一
(※1)参考:【ブログ運用管理】元メルマガ編集長の管理術を大公開
(※2)参考:メディア・媒体を運用するための表記ルール
2003年~2004年
【6】業種:冊子編集者|媒体:フリーペーパー
プラットフォーム事業、データベースマーケティング事業、公共サービス関連事業のほか、数々のネットサービスやプラットフォームサービスを企画。新しいライフスタイルを提案するTSUTAYA、蔦屋書店・家電、Tポイント、図書館、映像配信など展開。同社店頭フリーペーパー『VA』編集部に出向。
<業務領域と習得スキル>
➊ フリーペーパー編集:出稿記事の編集校正校閲/アー写やジャケ写手配/クライアント記事確認
… コンテンツ編集力/渉外力
➋ ディレクション:ライター/デザイナー/カメラマン/スタイリスト/ヘアメイク(撮影時)
… ディレクション力
➌ ライティング:記事執筆/インタビューおよびインタビュー原稿作成(自身対応の場合)
… コピーライティング力/ライティング力
➍ 企画:店舗取材(全国のTSUTAYA店舗の取材記事)/コラム/プレゼント/リリース/各種告知
… コンテンツ企画力/調整力(アレンジ力)
➎ 営業:ライブ/フェス/コンベンション(レーベル主催のアーティスト販促イベント)営業
… 業界人脈/業界慣習の知見
2005年(前半)
【7】業種:コンテンツ編成|媒体:モバイル
<サイバード>
モバイルを軸としたコンテンツサービスやゲームの提供、コンテンツビジネス支援、クロスメディアソリューションの開発や提供、モバイルやウェブサイトの構築、Eコマース、次世代プラットフォームやテクノロジーの研究開発を行うIT企業。同社コンテンツマーケティング企画における運用責任者。
<業務領域と習得スキル>
➊ マーケティング:100以上(2005年当時)展開する自社の公式モバイルサイト間の相互誘導施策
… コンテンツマーケティング力
➋ レポート:アナリティクス日報・週報・月報の取りまとめ/レポート分析予測
… レポーティング力/分析力
➌ 編成:モバイルポータルサイトにおけるシーズナルコンテンツの編成
… コンテンツ編成力/コンテンツ調整力
2005年(後半)~現在
【8】業種:コピーライター|媒体:オールジャンル
アナログとデジタルの知見豊かなコピーライティング力を誇る企業系ワーディングのスペシャリスト。雑誌、書籍、ウェブ、モバイルと各種メディアで培った高度な情報設計力(インフォメーションアーキテクト=AI)と情報編集力で、あらゆる概念、コンテキスト、文章、文言、コピーを最適に言語化。
<業務領域>
➊ ブランディング/リブランディング:コンセプトやコミュニケーションの設計/トンマナ(※1)
➋ CI(コーポレートアイデンティティ):企業理念/BI(ブランドアイデンティティ)(※2)
➌ コピーライティング:タグライン/スローガン/コーポレートコピー/ネーミング/キャッチ
➍ テクニカルライティング:マイクロコピー(ボタン操作/フォーム/エラー文言)/UXライティング
➎ 情報設計(AI):グロナビ/構成/分類/整理/統一などを意識した俯瞰的視座による情報整理
➏ 情報編集(コンテンツ編集):情報の精査・取捨・抽出・濾過などの編集/リサーチ/校正校閲
➐ 広告販促広報:ワーディング/コピーワーク/コミュニケーション/コンテンツ/リリース
➑ メタタグ:ページタイトル/見出し(H1タグ)/ディスクリプション/OGP(SNS用の概要文言)
(※1)参考:ブランディングとコピーライティングの密接な関係
(※2)参考:一番かんたんな企業理念の書き方
<媒体領域>
➊ オンスクリーン:ウェブサイト/スマートフォン/メルマガ/オウンドメディア/SNS
➋ モバイル型デジタル:アプリ(コンテンツ/操作文言/フロー/ウォークスルー = 導入画面)
➌ スタンド型デジタル:デジタルサイネージ/ディスプレイ/タッチパネル/電車内ビジョン
➍ オフスクリーン:紙/冊子/会社案内/販促誌/ポスター/チラシ/メニュー/ブローシャー
➎ 動画ムービー:絵コンテ/字コンテ/ストーリー/ナレーション原稿/テロップ原稿
➏ 看板:交通広告(中づり/つり革)/空港看板/屋外広告全般
➐ セミナー/コンサルタント:コピーライティング/コミュニケーション/ブランディングなど
➑ 美術工芸大学義講:コピーワーク/コミュニケーション/情報整理/編集/コンセプトワークなど
<賞歴>
➊ グッドデザイン賞(2009年):ウェブ「どんな?文科!」@文部科学省(※)
➋ アックゼロヨン・アワードグランプリ/内閣総理大臣賞(2009年):受賞対象クリエイティブ同上
➌ グッドデザイン賞(2022年):スマフォアプリ「おうちマネージャー」@日本リビング保証
(※)同サイトは現在クローズ
コピーライターに必要な編集スキル
編集者出身のコピーライターは希少
①異国放浪。②雑誌記者。③書籍編集者。④ECサイトディレクター。⑤モバイルメルマガ編集長。⑥フリーペーパー編集者。⑦コンテンツマーケター。⑧オールジャンルコピーライター。振り返ると一般的なコピーライターと比べ、かなり特殊なキャリアかと思われます、自分でいうのもアレですが(謎)。
ってか、何が一般的なコピーライターのキャリアなのか正直わかっていませんけど、客観的に見れば雑誌、書籍、ECサイト、モバイルという各種媒体でのキャリアに加え、「ガチの編集者」というキャリアを持ったコピーライターは、当方周辺にかぎりますけど、たぶんかなりめずらしいと思われます。
コピーライターに活きる編集スキル
ここまでのキャリアを踏まえて、当方がコピーライター業務に活かせていると実感する編集スキルを挙げてみましょう。ちなみに、以下はオフスクリーン(雑誌/書籍/冊子/紙など)、オンスクリーン(ウェブ/モバイル/アプリなど)両メディアとも、共通して体得した編集スキルといえます。
➊ コピーライティング力
… タイトル/見出し/コーナー名/キャプション/サブジェクト/メルマガ/インデックス
➋ ワーディング力/言語化力
… リード/本文執筆/原稿整理/概念整理/コンセプト設計/企画書/提案書
➌ ヒアリング力
… 取材/インタビュー/質問表(ヒアリングシート)
➍ リサーチ力/プレゼン力
… 下調べ/企画/提案/伺い書/依頼書/交渉/渉外
➎ コンテンツ編集力/UIUX知見
… 編集/レイアウト/グロナビ/画面遷移/ワイヤー/マイクロコピー/テクニカルライティング
➏ クオリティ
… 校正校閲/表記ガイドライン/トンマナ感度(各媒体や体裁に準じた表現マナーやトレンド)
コピーライターに必要なスキルとは
ちなみに、スキルが高いなど驕りはなく、何なら編集者時代に大物作家の玉稿に触れたために言葉にはコンプレックスさえ感じています。ただ、編集者のクセが沁みついているからか、かえってその感覚が言葉に慎重になり客観的にもなり、読み手に寄り添ったコピー提供につながっている気がしています。
コピーライターに必要なスキルを挙げればキリがないですが、自身の経験から言えることは、世に発信する際に不可欠な校正校閲、言葉のマナー、表記の知識を基礎として習熟した「編集スキル」こそ、コピーライターにとって必要なスキルではなかろうか、そう当方は感じるのですけど、どうすっかね。
<当ブログのリンク設置や引用について>
・当ブログ「コピーライティングのトリセツ」は基本的にリンクフリーです。
・リンクを設置される場合の許可や確認のお問い合わせは基本的に不要です。
・ただし、リンクを設置される場合、または引用など出典先とされる場合は、
「コピーライティングのトリセツ/コピーライター|中村 和夫」の旨明記ください。
(了)