~ なぜブランディングにはコピーライティングが必要なのか ~
No.019|D.案件事例|D-004
ブランディングが重要な理由
ブランディングが重要なのは言うまでもありません。企業・商品・サービス・タレント・スポーツの分野から、店舗・物販・就職・SNSなど個人レベルにいたるまで、いずれも当てはまることでしょう。どんな分野であっても「他者との差別化」は不可欠であり、そのために行うのがブランディングです。
目次|INDEX
【1】ブランドについて
【2】ブランディングについて
【3】ブランディングの関連用語
【1】ブランドについて
ブランドとは
まずはじめに、ブランドの意味をおさえておきましょう。いくつかの字引の要点から引くと、
ブランドの意味
他者(社)と区別=差別化をはかるために考案された名称・銘柄・言葉・形状・シンボル・デザイン、それら一式。商標。高級品を指すこともある(ハイブランド)。
というような意味になるようです。次に、その定義をおさえておくと、
ブランドの定義
ある特定の商品やサービスが、消費者・顧客によって「識別されている」とき、その商品やサービスを「ブランド」と呼ぶ。
※出典:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会「ブランド」
出典によると、上記のような定義になるようです。せっかくなので同じ出典より、その語源としては、
ブランドの語源
・古ノルド語で“焼印をつける”という意味の「brandr(ブランドル)」が語源
・古ノルド語とはスカンジナビア人によって使われていたと言われる北欧の古い言葉
・放牧牛が他人の所有物と紛れないように示すため「焼き印」を押す風習があった
(抜粋)
※出典:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会「どうしてロゴが牛なの?」
というような語源があるようで、焼き印や刻印など元来の意味から派生し、やがては他者との差別化にも通じる象徴、シンボル、銘柄、商標という意味を持つようになっていった、という流れも頷けます。
【2】ブランディングについて
ブランディングとは
では、ブランドから派生したブランディングとなれば、ブランドの定義となる「消費者・顧客によって識別されている」という状態にしていく活動を指すのでしょうから、ブランディングを「他者と差別化すること」と定義しても問題なさそうで、ついでに他者とはだいたい競合を指すのでしょうから、
ブランディングの定義
ブランディングとは競合との差別化である
ということで、以降本稿では、ブランディングを上記のように定義して、話を進めていきます。
基本的なブランディングの方法
あらためて、それではブランディングを行うとは、具体的にはどんなことをするのでしょう。
・ビジュアル:形状、色、デザイン、容姿、キャラ
・サウンド:音、リズム、声、BGM、操作音、SE
・テイスト:味、食感
・フレグランス:香り
・ユーザビリティ:使い勝手、触感
といった側面において、優位性や個性を高めることが、具体的な方法になると思います。細かく見ればキリがないのであくまでざっくりですが、これらのようなビジュアル、見た目、というか知覚的な側面へのアプローチが基本的なやり方になるでしょう。まあ競合がいない、または少ない場合はですけど。
今どきのブランディングの方法
ご承知のとおり、競合がいない、または少ないマーケット、いわゆるブルーオーシャンなんてどこへやら、今どきのマーケットは弱肉強食の競合だらけ、レッドオーシャンなワケです。そんな群雄割拠な中で差別化するには、見た目などの訴求とともに「考え方」の訴求がより求められます。具体的には、
顧客に向けて=いわゆるtoCなら、
・コンセプト(概念)
・メッセージ(想い)
・ストーリー(物語)
・ヒストリー(歴史・変遷)
・バックグラウンド(背景)
企業に向けて=いわゆるtoBなら、
・ビジョン(未来像)
・ミッション(使命)
・バリュー(価値観)
・フィロソフィ(哲学)
・ステートメント(宣言)
といったラベルに代表される考え方において共感を得ることが、ブランディングのおもな目的になってきます。当然、共感を得る以前に、そもそも理解されなければなりません。であれば、上記に挙げたようなコンセプトやビジョンのような考え方を理解してもらうためには、どうすればいいのでしょう。
ブランディングに欠かせない方法
コンセプトやビジョンのような類は、丸・三角・四角、赤・青・緑のように具象的な「モノ」ではありません。これらは考え方や思考であり、どれも抽象的な「コト」です。そんな「コト」を伝えるには、なんだかんだ「言葉」にしなければなりません。そう、ブランディングに欠かせない方法、それは、
ブランディングに欠かせない方法とは、言葉、文字、テキスト、すなわちコピーライティングである。
とっても伝えたいことなので、目立たせておきました(謎)。とはいえ、ここまで記しておきながら、
「いやいや、ビジュアルをはじめとするデザインとかでもさ、コンセプトやビジョンなんかを理解させることって、できんじゃね?」
うむ、確かに。当然ビジュアルなどデザインでも理解させることはできそうです。ただ、文字や音声がなければ図版・画像・動画などだけでは限界あり→言葉に起こす必要あり→それでもどうしても冗長になるので端的にする必要あり→なんだかんだコピーライティングが必要←イマココ、というワケです。
瞬時に理解させるのがコピーライティング
競合だらけのマーケット。膨大な情報。容易に比較検索できるネット環境。ますますなくなる余白の時間。そんな状況下ではなおさら競合に対する優位性や際立つ個性が瞬時に理解できなければ、見向きもされないのが必定です。だからこそ端的な言語化=コピーライティングという作業が必要になります。
【3】ブランディングの関連用語
ブランディングで使うコピーライティング
ここで少し、ブランディングの現場で混同される2つのコピー用語について、触れさせてください。それはつまり、「キャッチコピーとタグラインの違い」です。
キャッチコピーとは
・語源:キャッチ=捕らえる/コピー=広告などの文案
・意味:注意をひくため、喚起や認知のために用いる広告文、宣伝文、惹句
・役割:販促・広告(おもに売り込みたいこと)
・訴求:最も魅力的なこと
・効果:短期的
・類語:キャッチフレーズ、セールスコピー、売り文句、うたい文句
タグラインとは
・語源:タグ=札、識別/ライン=線、行
・意味:(情報や要素など)さまざまなことを端的に言語化した合言葉
・役割:啓蒙・認知(おもに企業やブランドの考え、想い、宣言、約束)
・訴求:最も大事にしていること
・効果:中長期的
・類語:スローガン、モットー
キャッチコピーとタグラインは実によく混同されます。ぶっちゃけその役割が合っていれば用語としてはどっちでもいいのですが、正確にはこのように役割が異なります。この違いについてゆるーく理解いただいた上で、次にブランディングの向き、方向、対象というか、ベクトルについて触れていきます。
2つのブランディング
ブランディングは、アウターブランディング、インナーブランディングというように、大きく2つに分けられます。
アウターブランディングとは
・意味:「社外」に向けて展開されるブランディング
・対象:自社の外=顧客、事業者、パートナー、地域、社会など
・手段:TV、ラジオ、新聞、雑誌、ネット、SNS、リアルイベントなど
・同義:エクスターナルブランディング
インナーブランディングとは
・意味:「社内」に向けて展開されるブランディング
・対象:自社自身=社員、関連会社、パートナー、場合によってはその家族など
・手段:企業理念、経営理念、ビジョン、ミッション、バリューなどCIまわり
:行動指針、クレド、ポリシーなど社内規範まわり
:ガイドブックやムービーなどの社内報、研修、ワークショップなど
・同義:インターナルブランディング
「社外」に向けたイメージが強いブランディングですが、「社内」に向けたブランディングも同じく重要で、前者はアウターブランディング、後者はインナーブランディングとして区別されます。なお、インナーブランディングであれ、たとえば競合に勝るための人材教育など、差別化はやっぱり必要です。
【4】求められるブランドメッセージ
セールス系とガバナンス系
さて、ここまでキャッチコピー/タグライン、アウターブランディング/インナーブランディングについて触れてきましたが、最後にもうひとつだけ。それは、セールス系/ガバナンス系という視点です。
補足すると、まあそのままですけど、セールス系とは販促や広告の分野、ガバナンス系とは企業統治の分野を指します。整理のため、キャッチコピー/タグラインをA群、アウターブランディング/インナーブランディングをB群、セールス系/ガバナンス系をC群とし、それらを踏まえ列記してみます。
A群:キャッチコピー/タグライン
B群:アウターブランディング/インナーブランディング
C群:セール系/ガバナンス系
どうでしょう。何か見えてきたのであれば、とても勘が鋭いと思います(謎)。実は、各群の「/」(スラッシュ)の前者と後者では、それぞれで親和性があります。では、前者と後者で分けてみます。
ブランディングの基本的な枠組
キャッチコピー(をよく使うのは)
アウターブランディング(の場合が多く)
セールス系(が目的となることが多い)
タグライン(をよく使うのは)
インナーブランディング(の場合が多く)
ガバナンス系(が目的となることが多い)
もちろんキャッチコピーをインナーブランディングのガバナンス系に用いたり、タグラインをインナーとアウターの両ブランディングに用いたりと、必ずしも当てはまるとはかぎりませんが、ブランディングの現場では上記の枠組になることが多いので、基本の枠組としておさえておいても損はありません。
ブランディングでよくある相談
さて、なぜこのようなことに触れてきたかというと、案件現場でキャッチコピーとタグラインがよく混同されるなあと常々感じていたことに加えて、以下のような相談が最近増えていることが理由でした。
ブランディングを強化したい。
ブランディング=競合との差別化と定義したとおり、こんな相談の場合、差別化となる優位性、個性、強みなどを探る作業になり、逆に言葉で探らないなんてことはあり得ないので、当然言葉の言語化を行います。なので当方のようなコピーライターに相談が寄せられるんですけど、おかげさまで(謎)。
このときの言語化とはつまり、端的な「一文」を紡いでいくことであって、最終的に文字数としては最小限のメインコピー(キャッチコピーやタグライン)を作成することになるんですけど、そのためにもまず、当初に洗い出した言葉群から洗練させた先の一文を土台にする必要があります。流れとしては、
ブランディングにおけるコピーライティングの作業の流れ
(1)優位性・個性・強みなどから洗い出した言葉群の抽出
(2)(1)の言葉群から洗練させた一文の作成
(3)(2)の一文からワンフレーズにしたメインコピーの作成
要するに、いきなり(3)のメインコピーから作成していくのではなく、ほとんどの場合(2)の一文を起こさなければ、(3)のメインコピーはなかなか組み立てられません、まあ当方の場合はですけど。
発注当初は、(3)のメインコピーが求められているようでいて、実際には(2)の一文が最も重要なブランディング=差別化となる要素の根幹であって、結果的にブランドメッセージとして成立するため、最終的に必要だったのはコピーよりもこちらの一文だった、なんていうケースは少なくありません。
ブランディング強化の真理
要は「ブランディングを強化したい」というオーダーは、「ブランドメッセージを言語化したい」というオーダーを意味することが多い、ということを伝えるのが今回の要旨でした。では、最後にブランディングの強化=ブランドメッセージの言語化の際に、意識しておきたいことを表にまとめてみます。
ブランドメッセージの作り方(早見表)
ブランディングにはコピーライティングを
ブランディングは差別化だと定義しましたが、差別化とはつまり「好きに値する事由の言語化」であり、それがブランディングであり、それはどんな分野でも必要であり、そのためには端的な言語化が必要であり、その手段となるコピーライティングが、ブランディングにはやっぱり必要なのかな、と。
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(了)