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企業の本質が秒で伝わる1行理念のテンプレ

  • 執筆者の写真: コピーライター|中村 和夫
    コピーライター|中村 和夫
  • 4月10日
  • 読了時間: 9分

更新日:4月21日

~ たったの1行で企業コミュニケーションのすべてが定まる ~


No.029|A.コピー基礎|A-005

画像について:1行:文章のひとくだり。一列の文字。最小限の一文。 ──で書く。 ──にまとめる。 ──理念を企業のよりどころにする。
爆発的に増殖する日常の情報

テレビ、ラジオ、新聞などのオールドメディア。ネット、SNS、動画などのニューメディア。まあ、その精度や質はともかく(汗、メディアの多様化で人々が接触する日常の情報は爆発的に増殖。そこにスマホの普及もともなって、日々膨大な量の情報が猛スピードで拡散されては消化されていきます。



目次|INDEX


【5】超情報過多時代を生き残るためには


【1】情報化社会の言語化問題

画面について:未来のスマホ風画面から浮き出るさまざまなデジタルアイコンと、それをタッチする人差し指
2050年の情報量は4000倍

今どき情報の主流はもっぱらネットかとで、デジタルにかぎっては世界のデータ通信量は、2030年に30倍2050年に4000倍との予測もあり()、将来も情報は爆発的に増えていくのは確実でして、すなわち情報取得者=受け手は、膨大な量から瞬時に的確な情報を選別、かつ理解しなければなりません。


企業の課題は「情報の言語化」

対して、情報発信者=送り手となる企業は、SNSやオウンドメディア発信も当たり前となり、30倍とも4000倍ともされるこの先の情報化社会に、ブランディング多様性炎上への配慮も含め「簡潔で的確な情報の言語化」が強く求められ、企業コミュニケーションのハードルはますます高まるばかりです。


情報発信者となる企業のエゴ

企業が情報発信するとき「丁寧に、多く、詳しく」伝えたいという心理がどうしても働きます。反して「素早く、少なく、簡潔に」を求む今どきの情報の受け手にとってその心理こそストレス。これからの時代、情報を言語化する企業は、エゴともいえる発信時の心理をよりわきまえる必要があります。


【2】簡潔に本質を言語化する1行理念

画像について:対象を目的するために手段する/1行理念

自社を表す公式の「一言」がない

企業理念は企業が言語化する情報の代表格。仮にこれを企業の最上位概念となる「何のために何をする(企業)の言語化だとすると、タグラインなどワンコピーでは短すぎMVVなど体系では長すぎて、実は「何のために~」という公式の一言さえ存在しないのが大半なんです、当方の知るかぎり。


究極の1行に言語化できるテンプレ

そこで1行理念です。テンプレを使って自動的に「何のために何をする(企業)」という究極にシンプルな一言にする考え方でして、「対象/目的/手段」と3つの要素を使って「対象目的するために手段する(企業)」的な一言、つまり1行に言語化できてしまう手法です。テンプレは以下になります。


「対象」を「目的」するために「手段」する(企業) 


「対象/目的/手段」は、それぞれ「課題/解決/事業」と同義なので、「どんな事業で何の課題をどう解決する」と、同じように究極にシンプルな一言でも成立します。テンプレは以下になります。


「事業」で「課題」を「解決」する(企業)


1行理念のイメージ

では、実際にテンプレを使って起こしてみた、1行理念のイメージを挙げてみましょう。


<自動車メーカーの1行理念>

対象

目的

手段

交通事故を

ゼロにするために

自動運転を実現する(企業)

事業

課題

解決

自動運転で

交通事故を

ゼロにする(企業)


<外食企業の1行理念>

対象

目的

手段

孤食者の

健康のために

手作り料理を配送する(企業)

事業

課題

解決

手作り料理の配送で

孤食者を

健康にする(企業)


<ホームセキュリティ企業の1行理念>

対象

目的

手段

家族の

安全のために

遠隔から見守る(企業)

事業

課題

解決

遠隔から

家族の安全を

見守る(企業)


企業の本質となる3つの要素

対象=課題目的=解決手段=事業という3つの要素は企業の本質でして、いずれかだけではふんわりするし、何かを足そうとすると冗長になります。「何のために何をする(企業)という企業の本質=究極の一言をたったの1行で簡潔に言語化するなら、3つの要素で組み立てるのが最善なのです。


【3】1行理念が企業の本質を言語化するしくみ


画像について:課題=対象:何/どこ/誰/市場/領域/マーケット|解決=目的:何のため/理想/未来/ビジョン|事業=手段:何をする/なる/使命/役割/ミッション
なぜ「対象/目的手段」の3要素か

「そもそもなぜ対象/目的/手段なんだぜ?」。ふむ。そげんな疑問には答えるべきですね。それは「行動/意志」を言語化する場合、「自ら」であれば主語は不要、余計な修飾語や副詞も省いて残った意味が成立する最小限の要素が「対象/目的/手段」になるからです。たとえばこげんな感じです。

空腹のため、ご飯を、食う。
欲しいため、洋服を、買う。
生活のため、お金を、稼ぐ。

自然な文章にするため「目的/対象/手段」の順ですが、「~のため=目的」「~を=対象」「~する=手段」と3つの要素で成立しています。まあ「~を=対象」はなくてもいいのですが、さすがにこれを省くとそれまでの文脈が理解されないかぎり、コミュニケーションは相当面倒なことになります。


3つの要素が企業の本質のワケ

意味が成立する最小限の要素となる「対象/目的/手段」を企業に当てはめたのが、前述の課題/解決/事業です。つまり3つの要素に触れることは、企業の本質を簡潔に言語化することになるワケなんですが、別の同義の視点からとらえても、3つの要素が企業の本質であることが理解できます。


3つの要素+α

同義

MVV

対象 = 課題

市場/領域

(マーケットなど)

目的 = 解決

理想未来

ビジョン

手段 = 事業

使命役割

ミッション

強み = 信念

価値観誇り

バリュー

MVVでとらえた際に加わる要素。3つの要素を修飾/補足する概念のため、3つの要素には含めない。


3つの要素で議論も簡潔

企業の本質を問う場合、対象/目的/手段という3つの要素でとらえれば、シンプルに3つそれぞれの概念でキーワードを洗い出すことになるため、複数の関係者でも認識が一致しやすく、企業理念のような複雑なテーマでも議論しやすくなります。情報の言語化と同じく、議論も簡潔なのが一番です。


【4】企業コミュニケーションに万能な1行理念


画像について:テーブルの上に置かれた用紙とペン、その向こうに2人のビジネスマンのイメージ
1行理念がもたらすメリット

そのしくみは理解いただけたとして(謎、字数が少ないタグライン、字数が多いMVVの中間的な1行理念はそもそも企業にとって必要でしょうか。あくまで所感ですがタグラインMVVなどさまざまな企業コミュニケーション少なくない数手がけてきた者として、確信しているメリットは以下の4つです。


メリット➊ 企業ワーディング

企業の本質を一言で言語化した1行理念があれば、あらゆる企業ワーディングが自然と定まる。

タグライン

自動運転を当り前に

1行理念

交通事故をゼロにする自動運転を実現する(企業)

ミッション

自動運転の実現

ビジョン

交通事故ゼロ社会

広告販促/IR

私たちは「交通事故をゼロにするために自動運転の実現」を目指す企業です。


メリット➋ 企業理念体系の策定

企業の本質を定めた1行理念があれば、概念定義の工程がほぼ省略され言語化工程に集中できる。

負荷

概念定義の工程軽減(言語化の工程のみに軽減できる)

予算

概念定義の予算削減(言語化の工程のみに削減できる)

時間

概念定義の時間短縮(言語化の工程のみに短縮できる)


メリット➌ ステークホルダーへの訴求

企業の本質を簡潔に表した1行理念があれば、ステークホルダーに統一感と納得感を与えられる。

社内

意志決定や事業判断の明確化、社内意思や士気の円滑な統一

社外

コンセプトやブランディングなどの統一感、ブレないメッセージでの共感醸成

投資家

明確な事業内容や事業目的からの期待感、容易な銘柄選定や差別化


メリット➍ コミュニケーションの軸

企業の本質を簡潔にしぼった1行理念があれば、企業コミュニケーションがスムーズに機能する。

経営者

×理念が社内に浸透しない…

◎1行なので浸透させやすい

採用/人事

×理念が学生に伝わらない…

◎1行なので覚えやすい

広報/IR

×企業方針に一貫性がない…

◎1行なので軸にしやすい

ブランド/販促

×企業特色に統一感がない…

◎1行なのでカラーを打ち出しやすい


企業の本質を一言にした1行理念があれば、どんな案件やタスクもスムーズに運びます。当方も自身のなかで言語化した1行理念をたよりに企業ワーディングに反映した案件がほとんどでして、実は𝕏=旧Twitterで1000社近く企業コピーを考察してきた点からも、1行理念は有効であると断言できます。


【5】超情報過多時代を生き残るためには


画像について:夜の商業ビルで無数に灯る各フロアのオフィスの明かりとそこで働くさまざまな人の影

何の企業かわからない

何百万社ともされる日本企業のなか、その素性が理解される企業はどれほどあるでしょう。無数の競合統廃合や難解で浸透しない企業名こじらせやありきたりで伝わらない企業理念。そこに秒速で去来する超情報過多時代です。もはや「丁寧で、多く、詳しい」情報なぞノイズになりかねません。


AIよりも人間クサイ人の機微を

急速に進化するAI人間が入力するプロンプト=命令文、元の値がなければ機能せず、ゼロ創作は苦手です。想いや行間などデータにしづらいアナログな「本質」の入力はまだまだ必要でしょう。そんな人間クサイ人の機微こそが、企業理念の品質を左右するのは間違いありません、まあ、今のところ。


1行理念は存在を表す情報ラベル

1行理念は企業理念などの言語化手法ではなく、あくまで機能は企業ワーディングのよりどころです。強みや信念の要素さえ省き、企業の本質を究極にシンプルな一言に言語化した1行理念は、超情報過多時代を生き残るために企業や個人が掲げるべき、自らの存在を表す情報ラベルかもしれません。


ここまで詳述してきた当方の1行理念を言語化したらば、さしあたりこげんな感じになるでしょうか。


コピーライター|中村 和夫の「1行理念」

企業や人の理念を 市民化するために 言語化で共感をもたらす


たった90秒の動画で1行理念が書ける

1行理念のごとく簡潔に本質を言語化すべく(謎、本稿のポイントをギュッと絞り込んだ動画を手弁当で制作しました。ちなみにナレーションはAIです(汗。たったの90秒なので、ぜひご高覧ください。



1行理念の手法に基づいて(あ。基づかなくても)、企業理念経営理念MVVパーパスフィロソフィクレドタグラインスローガンなどの言語化ワーディングその定義名称付け壁打ちまで、ざっくばらんにお悩みをお聞かせください。





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(了)

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