• コピーライター|中村 和夫

新型コロナ対策支援制度のネーミング考察

~ 支援? 給付? 助成? お役所用語の意味を再確認 ~


No.008|C.コトバ|C-002

菅新内閣の誕生

安倍首相の辞任にともない告示された自民党総裁選は、2020年9月14日(月)に投開票が行われ、菅 義偉(すが よしひで)氏が、第26代総裁、および第99代内閣総理大臣に選出。新内閣は、新型コロナウイルス対策や経済再生など、喫緊の課題に対し迅速な対応が求められます、などなど云々。


告示。喫緊。迅速。まあどれも字面(じづら)から何となくわかりそうですけど、当方が関わる商業コピーライティングの業務ではあまり使わないこれら「用語」のせいなのか、なんだかイマイチ情報が頭に入ってこない印象です。


わかりづらい「お役所用語」

政治離れと言われて久しいですが、メディアに頻出する、あまり日常では使い慣れていない、こうした「政治用語」も、政治離れの要因のひとつといえるかもしれません。


一方、政治によって採決された、私たちの生活に密接な役所などでの公的手続きでは、いわゆる「お役所用語」を目にしますが、意味がわからないからといって、手続きをあきらめるワケにはいきません。


そのため「この意味ってなんぞ?」「こういう意味ぞね?」的に、国民であるこちら側から、役所であるあちら側に歩み寄って、読解しながら手続きをさせられている感が、なんだか否めません。


コロナ対策で目にする「用語」

先日、新型コロナウイルス対策として政府から打ち出された「特別定額給付金」でも、申請における混乱が話題になりましたけど、わかりづらい「用語」が混乱させるという指摘もされているようです。


そもそも「給付金」というコトバ自体、日常ではあまり使わないので、あらためて理解しておく必要がありそうです。そこで、小欄コトバカテゴリのお題らしく、新型コロナウイルス対策の支援制度で目にする「用語」に注目して、何か気づきがあるかを考察してみます。



新型コロナウイルス対策支援制度の一覧(抜粋)

新型コロナウイルス感染拡大にともない、さまざまな支援制度が政府を中心に打ち出されています。すでに終了した支援制度も含め、ここでざっとですがピックアップしてみます。


※順不同。リンク先はできるかぎり公式から出典(一部リリース、PDF資料、記事なども含む)。

※テキストがコピーできるよう、画像ではなくHTML形式のテーブルタグで表示しています。自作のためレスポンシブ対応まで手がまわらず、スマホなどでは表示がビミョーなので、PC版でご覧ください。




一目では内容が判別しづらい支援制度の「名称」

どーでしょう。


ピックアップしたのは一部ですが、新型コロナウイルス対策における支援制度の「名称」から、支援内容が、一目で判別できるでしょうか。


<支援内容>

  • どの支援制度が自分に該当するのか

  • 何に対して支援する制度なのか


<対象者>

  • 法人なのか

  • 自営業者なのか

  • 個人なのか


<返金有無>

  • 返金は不要なのか

  • 返金は必要なのか


<貸付内容>

  • 無利子なのか

  • 有利子だけど割安なのか

  • 有利子、かつ一般的な利率なのか

  • そもそも返金すべきものなのか


<免除内容>

  • 公金支払などが全面免除なのか

  • 公金支払などが減額なのか

  • 公金支払などの猶予なのか


うーん。申請する側としては、どうしても上記のような、数々のギモンが浮かんできます。


支援制度の「名称」からだけでは判別しづらいので、やはり「国民であるこちら側から、役所であるあちら側に歩み寄って」、各支援制度の詳細を熟読・読解した上で、該当すれば手続きを進めていく、となんだかとってもストレスを感じます。


どうやらこれら支援制度の「名称」に使われる「お役所用語」が、そんなストレスの一因ともいえそうです。


「ネーミング」というコピーライティング

ちなみに、社名、商品名、サービス名、サイト名、キャンペーン名、コーナー名など、商業コピーライティングの世界では、名称付け、いわゆる「ネーミング」というコピーライティング制作があります。


たとえば、生産管理上など、正式名称が数字やアルファベットだったりする場合、エンドユーザーやコンシューマー、つまりは消費者向けや販促用として命名されるペットネーム(愛称やニックネーム)といった名称も、ネーミング制作の範囲になります。


一口にネーミングといっても、ただ単純に語呂や語感だけで名付けられるワケでもなく(それだけで成立することもありますが)、ネーミング対象の「内容・意図・利点などが表現されている」「親しみやすい」「覚えやすい」など、さまざまな要素が反映・解決されているべきですが、そもそも「伝わる」ことは、何よりも大事な要素です。


ネーミングに使われる「お役所用語」を理解する

いずれにしても、先に挙げた支援制度の「名称」からでは、どれも内容が判別しづらく、ネーミングとしてはあまりよろしくなさそうです。


よくある解決策として、たとえば説明がムズイ保険商品などに「せせらぎ」「おおぞら」というように(謎)、ペットネームを付けることがありますが、支援制度に名づけても、かえって混乱しそうです。


これだけ支援制度が数多くある状況では(一つひとつはありがたい制度なのですけど)、せめて「国民であるこちら側に、役所であるあちら側からも歩み寄って」いただいて、少しでも支援内容が判別しやすい親切なネーミングをつけてほしいところ。とはいえ、まあ今さら変えるワケにはいきません。


ここはひとつ、やはり「国民であるこちら側から、役所であるあちら側に歩み寄って」、自身に該当する支援制度を知るためにも、支援制度のネーミングに使われている「お役所用語」の意味を、あらためて理解しておく必要がありそうです。


コロナ対策支援制度のネーミングに使われる「お役所用語」

それでは、前段で列挙した支援制度のネーミングに実際に使われている「お役所用語」を、ひろってみましょう。


  • 給付金

  • 補助金

  • 助成金

  • 支援金

  • 手当金

  • 貸付

  • 減免

  • 免除

  • 猶予

  • 保証

  • 特例

  • 制度

  • 事業


ズバリ(旧いか…)、支援制度のネーミングからではその内容が判別しづらい要因。それはもうなんといってもやはり、日常で使い慣れていない、これら「お役所用語」と断言してもいいでしょう(あくまでネーミング視点ですけど)。しかもいずれも似たような用語が並び、イマイチ違いがわかりません。


そういえば、ちょうどこの時期、5年に一度という国勢調査が実施されていますが、この「国勢」っていうのもイマイチピンとこない「お役所用語」でしょうね。

※国勢:こくせい。国の勢い、情勢、勢力。国の人口・産業・資源などの総合的な状態。/参考:デジタル大辞泉(小学館)ほか


つきまして、支援制度のネーミングに実際に使われている「お役所用語」について、「国民であるこちら側」の視点に立って、そのコトバの意味をあらためて理解しながら、以下に考察していきましょう。



支援制度のネーミングに使われる「お役所用語」の解説

※以下、字義的な意味は、大辞泉(小学館)Weblio国語辞典(ウェブリオ社)などを参考。

※あくまで字義的な視点での考察につき、各支援制度の内容を断定するものではありません。

※詳細は、各支援制度の公式サイトなどでご確認ください。


➊(お金を)もらえる系


  1. 給付 … 金品・物品を支給する(される)こと

  2. 補助 … 不足している部分を補い助ける(助けられる)こと

  3. 助成 … 事業・研究が発展・完成するよう、主に経済面で援助する(される)こと

  4. 支援 … 他人を支え、力を貸して、労力や金銭面で助ける(助けられる)こと

  5. 手当 … 労働報酬、諸費用、心づけ、祝儀


字義的には、1.=「支給」、2.=「補い」、3.=「援助」、4.=「助け」、5.=「心づけ」的な意味。よって、これらに「金」が付いて「給付金」「補助金」「助成金」「支援金」「手当金」とされている場合は、明記がないかぎり「もらえるお金」「返えさなくていいお金」、とイメージすればいいのかも。


※同様の用語で、「奨学」(金)、「協賛」(金)、「扶助」(費・料)などは(後段にて詳述)、「もらう」「返す」といずれのケースもあるので都度確認するのが得策。



➋(お金を)借りる・払う系


  1. 貸付 … 資金・物品・権利を貸す(貸してもらう)こと

  2. 減免 … 減らす・軽くする(してもらう)こと、および免除する(してもらう)こと

  3. 免除 … 債務(返還・返金する義務)を消滅させる(消滅してもらう)こと

  4. 猶予 … 実行の期日を延ばす(延ばしてもらう)こと


字義的には、1.=「借りる」、2.=「減る/消滅する」、3.=「消滅する」、4.=「延ばす」的な意味。よって、おもに「金銭」「借用」「支払」などに関わることであれば、明記がないかぎり「1.貸付」なら返す、「2.減免」なら(支払などが)減額または不要、「3.免除」なら(支払などが)不要、「4.猶予」なら(支払期日などが)延期、とイメージすればいいのかも。


※同様の用語で、「貸与」なら貸すこと、「借用」なら借りること、とイメージすればいいのかも。



➌(お金で)守られる系


  1. 保証 … 債務(返還・返金する義務)を負う(負ってもらう)こと、責任・約束を果たす(果たしてもらう)こと


字義的には、「負ってもらえる」的な意味。よって、「保証金」の場合は、明記されていないかぎり、(損害などを)金銭で負ってもらい守ってもらえる、とイメージすればいいのかも。


※同様の用語で、「保障」なら(状態などを、何らかのしくみやカタチで)守ってもらえること、「補償」なら(金銭などで過失などを)つぐなってもらえること、とイメージすればいいのかも。



➍施策の定義系


  1. 特例 … 特別な場合に例外的に適用される法令・条例・規定

  2. 制度 … 規則、きまり、しくみ

  3. 事業 … 社会的・経済的な活動、行為、取り組み


字義的には、1.=「例外的な法」、2.=「しくみ」、3.=「取り組み」的な意味。よって、「1.特例」なら(通例ではない)例外の法、「2.制度」ならしくみそれ自体、「3.事業」なら取り組みそれ自体、とイメージすればいいのかも。


※同様の用語で、「施策」「対策」は手段・方法それ自体、とイメージすればいいのかも。



➎その他まぎらわしい用語系


  1. 奨学 … 学問や研究を奨励する(される)、勧める(られる)こと

  2. 協賛 … 賛同して協力する(してもらう)こと

  3. 救済 … 救い助ける(られる)こと

  4. 共済 … 助け合うこと

  5. 互助 … 助け合うこと(相互扶助)

  6. 扶助 … 助ける(助けてもらう)こと

  7. 後援 … 後ろだてとなって援助する(してもらう)こと

  8. 拠出 … 金銭を出し合うこと(本来は「醵出」。「拠出」は当て字)

  9. 供出 … 政府などの要請に応じて金銭などを差し出すこと

  10. 護持 … 守り保つ(保たれる)こと(護寺という用語もアリ)

  11. 剰余 … あまり。残り。余分

  12. 割戻 … 元に戻す・返す(される)こと


字義的な説明は上記のとおりだが、「奨学金」「協賛金」「共済金」のように、これらに「金」が付いた場合は、それぞれの字義的な意味をあらかじめイメージするのが、やっぱりいいのかも。



新型コロナウイルス対策支援制度のまとめ


結局のところ、それぞれの支援制度の内容については、その名称・ネーミングからだけでは判別しづらく、各制度の詳細を読み込んでいくしかなさそうで、つきまして、下記のような新型コロナウイルス対策支援制度のまとめサイトなどを参照いただきたく、恐縮のかぎりです。



とはいえ、「普段使っている」「わかっている」「認識できている」つもりでいて、実はそうでもない「お役所用語」を、今回あらためて再認識することで、今後コピーライティング的にどこかで活かせるかもしれず(?)、少しは有益な考察になっていたら幸いなのですが(ムリやりですけど)。



一人でも多くの方が支援制度で救われますように

なんだか小欄、「コピーライティングのネーミング的には、各支援制度の名称はわかりづらいぜ」的にディスっている印象を持たれそうですが(汗、もちろん、そんな些末なことが主題ではありません。


実際、各支援制度の名称からでは、その支援内容は判別しづらく、課題も種々あれど、前段に挙げたとおり、こんなにもの膨大な支援制度が政府を中心に出されていること。そして、コロナ禍で困窮する方々が、こうした支援制度で一人でも多く救われること。そんな考えから、各支援制度のネーミングについてコトバの視点で考察を試みたのが、小欄の真意です。


一連の給付金や支援制度については、不正受給問題がメディアでも取り上げられ「申請を取り下げたい」「返金したい」といった相談が急増しているようで悲しいかぎりですが、何より新型コロナウイルス感染拡大で、苦しまれている方々の元に、速やかで十分な支援が行き届くことを願うとともに、国難ともいえるこの時期に船出した、新政権・菅内閣のコロナ対策・経済再生に、期待する次第です。

(了)