コロナ禍に出稿された広告のレビュー
- コピーライター|中村 和夫

- 2020年7月3日
- 読了時間: 12分
更新日:2025年3月27日
~ ウィズコロナを意識した広告コピーのニューノーマル ~
No.007|B.コピーレビュー|B-002

目次|INDEX
➋ トヨタの新聞広告
➍ ロッテの新聞広告
➏ クレハの新聞広告
➋ 進む(トヨタ)
コロナ禍で激変した社会と日常
新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。2020年4月7日(火)に発令された緊急事態宣言は、同5月25日(月)に解除宣言されましたが、7月に入ってもなお、都内を中心に感染者数が途絶える気配はなく、まだまだ予断を許さない状況です。
ステイホーム、ソーシャルディスタンス、テレワーク、リモート会議、オンライン飲み会、リモートマッチ、ビフォーコロナ、アフターコロナ、ウィズコロナ、ニューノーマルなど、コロナ禍によって生まれ浸透した、これらさまざまなキーワードが表すように、社会や日常は大きく様変わりしました。
ウィズコロナを意識した広告コピー
当方が関わる案件やプロジェクトは、モノやコトの販売や認知を促進する、いわゆるセールスプロモーションやセールスコピーといわれる、商業コピーライティングの分野になりますが、コロナ禍で変わってしまった社会情勢にあわせて、現場でもコミュニケーションに配慮することが増えてきています。
近年当方が関わるメディアは、そのほとんどがウェブをメインとするデジタルメディアですが、対してペーパーメディアにおいても、コロナ禍を意識したコミュニケーションが見られるようになりました。
そんなペーパーメディアを代表する新聞広告を例に、2020年6月末~7月頭に掲載された、アフターコロナ、ウィズコロナを意識した広告コピーに注目し、これからの広告表現の「新常識」、つまりは「ニューノーマル」なコミュニケーションスタイルを先取ってみる、というか何か気づきを得られるか考察してみます、ちょっとハードル高そうですけど。
※解説は過去に関わった編集・案件などを参考とする当方想像であり、断定するものではありません。
※アミカケ枠内の斜体は引用箇所、同スラッシュ(/)は実際の改行箇所。敬称略。出稿日付順。
➊ ENEOSの新聞広告

※出典:20年6月26日(金)/読売新聞/朝刊5面(全面広告)
ENEOSの新聞広告レビュー
今、直面している環境問題や社会課題は、時代の進化と隣り合わせだ。と、ボディコピーの1行目からは「だである調」で始められ、直接的な表現をせずに、コロナ禍の社会情勢を意識させながら、
前へ進もうと力を尽くす人々を支えること~
日々の暮らしに、安心を届けること~と、自社の「できること」がふたつほど明示され、
だから、私たちは変化を止めない。
(略)
モビリティサービス・ライフサポート・エネルギーサービスにおいて、
地域サービスの充実をはかり、人にやさしい街づくりに貢献していく。と、力強く宣言しながら、
未来へ Do! ENEOSというキャッチフレーズとともに、
新たな変化を次々と。と、結んでいます。
ENEOSのキーワードは「変化」
JXTGグループからENEOSグループへと、ブランド名称が変更されたことの認知が、広告の主題だと想像されますが、アフターコロナ、ウィズコロナを意識した「変化」を訴える企業姿勢が、うかがえます。
コピーライティング的には、中盤までのトンマナ(トーン&マナー)が「だである調」、後半では「ですます調」が採用されている点。トンマナは一種に統一するのが一般的ですが、二種を併存させる場合、読後感としては、当然最後のトンマナの印象(本例の場合は「ですます調」)が印象に残ります。
➋ トヨタの新聞広告

※出典:20年6月27日(土)/読売新聞/朝刊6面(全面広告)
トヨタの新聞広告レビュー
幸せのために、何ができるだろう。と、ボディコピーの3行目で自問し、
かけがえのない一言、/かけがえのない一人、/かけがえのない一台、と、幸せの始まりを感じさせる事柄を挙げながら、
困っている人がいたら助ける。/目の前の人を笑顔にする方法を考える。/他の人の幸せを、/自分の幸せのように思ってみる。/人のために力を出す。と、幸せのためになるような具体的な行動を、愚直に自答していき、
人ともっとつながりたい。/そのための努力に真剣になりたい。と、コロナ禍の社会情勢を意識したかのような、強い願望が吐露され、
この町の、かけがえのない一日のために。と、前半で挙げた「かけがえのない」事柄を、「一日」という事柄で回収しながら、
トヨタは、その考えで進みます。と、明確に宣言しています。
トヨタのキーワードは「進む」
一言、一人、一台、一日(「一」で統一している表記に好感)と、当たり前にある事柄が「かけがえのない」ことだと、コロナ禍の社会情勢下で再認識させるメッセージを送りながら、「かけがえのない一日」のために「進む」ことを、企業姿勢として明らかにしています。
コピーライティング的というか、広告手法的には、世界的な大企業の豊田章男社長でありながら、どこか庶民的な直筆・筆致が採用されている点。親近感を与える演出に一役買っています。
先に触れたENEOSが、立ち並ぶビル群や輝くネオンをイメージさせる「街」と表記しているのに対し、トヨタでは、町内やご近所をイメージさせる「町」と表記している点も、親近感を与える一助になっているのかもしれません。
➌ 積水ハウスの新聞広告

※出典:20年6月28日(日)/読売新聞/朝刊5面(全面広告)
積水ハウスの新聞広告レビュー
考えたこと 気づいたことがある
テレワークや ステイホームの日々にと、明らかにコロナ禍の社会情勢下であろう日々で至った、考えや気づきをストレートに語りはじめ、
たとえば 食べること 料理すること
話すことも 片付けることも ぜんぶみんな
大切なんだ 当たり前のように 思っていたと、これまでの無自覚を自省するように告白し、
あらためて思うこと 家族がいて
夫婦がいて こどもがいて この家にいて
大切なんだ ずっと そうだったけど
これからの日々は きっともっと そう思うと、コロナ禍の社会情勢下によって(と感じさせるように)、大切なことをあらためて認識し、
こんな場所は 世界にふたつとない
こんな不思議な 幸福な場所は
ほかにないと、「幸福な場所」を強く確信しながら、
家に帰れば、積水ハウス。という、お決まりの名キャッチコピーで、結句しています。
積水ハウスのキーワードは「新しい日々へ」
テレワークやステイホームをきっかけとして、「幸福な場所は家族や家」だと再認識させるメッセージに添えられた冒頭の「新しい日々へ」。アフターコロナ、ウィズコロナの社会生活のもと、新たなスタイルでくらしていこうとする企業のポジティブな姿勢が、この見出しから感じられます。
コピーライティング的には、見出し(「新しい日々へ」)から、ボディコピー(「考えたこと~ほかにない」)まで、句読点を一切使わず、読点(、)の代わりにすべて全角アキが入れられている点。余白感というか、見やすさの効果をもたらし、洋画の字幕などでもよく見られる、詩的な手法です。
➍ ロッテの新聞広告

※出典:20年6月29日(月)/日本経済新聞/38面(全面広告)
ロッテの新聞広告レビュー
ソーシャルディスタンスや
リモートの普及。と、コロナ禍の社会情勢にストレートに触れ、
人と人の距離が離れてしまう
新しい生活様式の中でと、新しい生活様式で強いられる、「距離」という新たな課題を挙げながら、
心の距離を近づけるお手伝いを
お菓子・アイスができたら嬉しいな。と、お菓子やアイスが「心の距離を近づけるお手伝いができたら」と独白し、
いつでも手が届く、幸せ。
お菓子・アイスにできることひとつずつ。と、お菓子・アイスを擬人化しながら、やさしく結んでいます。
ロッテのキーワードは「心の距離」
アフターコロナ、ウィズコロナで強いられる「物理的な距離」という課題に対して、お菓子やアイスが精神的な「心の距離」を近づけてくれることに、ふと気づかせてくれます。「お手伝いができたらうれしいな」だなんて、なんとも奥ゆかしい語り口調にも、好感が持てます。
コピーライティング的には、ガムやチョコレートに代表されるメーカーなので「お菓子」表記だけでもよさそうなところ、時節柄か「アイス」が併記されている点。実際に買い求めた読み手は、当方だけではないでしょう。誰もが社名を想起する名タグライン「お口の恋人」も、もちろん添えられています。
➎ ソニー生命の新聞広告

※出典:20年6月30日(火)/読売新聞/朝刊5面(全面広告)
ソニー生命の新聞広告レビュー
「リモートコンサルティング」、はじめています。と、コロナ禍ですっかり浸透した「リモート」を冠したサービスのスタートを見出しに添えて、
これまでの対面に加えてリモート(遠隔)でも可能となりました。と、新サービスの内容に触れながら、
それは、対面のコンサルティングと変わらない質と
安心をなかえた、先進のリモートシステムです。と、ここでも「リモート」を冠しながら特長を訴求し、
ソニー生命のライフプランナーは、次の挑戦をはじめています。と、同社のライフプランナーの前を向いた行動で、結んでいます。
ソニー生命のキーワードは「次の挑戦」
対面という従来のスタイルを進化させた、新たなサービスのスタートは、コロナ禍に対するただの対処療法ではなく、ライフプランにおける新たな可能性を感じさせながらも、アフターコロナ、ウィズコロナを見すえた同社の視線は、すでに「次の挑戦」へと向けられている、という印象を与えています。
コピーライティング的には、コロナ禍ですでに認知されていると思われた「リモート」という文言に、あらためて「遠隔」という親切な補足を添えた点に加え、かつての「保険外交員」に対する「ライフプランナー」という呼称が、生命保険の固いイメージをすっかり変えたと再認識させ、好感が持てます。
➏ クレハの新聞広告

※出典:20年6月30日(火)/読売新聞/朝刊14面(全面広告)
クレハの新聞広告レビュー
共働きや在宅勤務が広がっているいま、と、コロナ禍の社会情勢に触れながら、
夫婦の間で「どっちがやる」ではなく、
「一緒にやる」という考え方も、広がりつつあります。と、コロナ禍でも、夫婦の間はあえて距離感を縮めるような考え方の広がりがあると提示し、
ちょっと気づくのが遅れてしまったけど、
前向きに動きはじめたひとにエールを。
まだまだ歯がゆさを感じながらも、
それを受け止めてくれるひとに敬意を。と、動きはじめたひと、受け止めてくれるひと、それぞれの背中を押すようなメッセージとともに、
互いが互いをもっと尊重し、支え合う世の中に。と、切なる願いを込めながら、
進化し続ける
家族のそばに、
いつも。と、同社の代表商品「クレラップ」の商品写真とともに、結んでいます。
クレハのキーワードは「進化し続ける」
コロナ禍をきっかけに、夫婦の距離感が(変化や退化ではなく)「進化し続ける」というメッセージに新鮮味を覚えるだけでなく、「互いが互いをもっと尊重し、支え合う世の中に。」というメッセージは、今の社会情勢にとって、広く共感される願いではないでしょうか。
コピーライティング的には、
逆説:「~遅れてしまったけど、」&「~感じながらも、」
ひらく:「~前向きに動きはじめたひとに~」&「~受け止めてくれるひとに~」
韻(いん):「~にエールを」&「~に敬意を」
のように、細やかに呼応させている点は、当方もとくに心を配る配慮のひとつで、とても感心します。
➐ Googleの新聞広告

※出典:20年7月1日(水)/読売新聞/朝刊5面(全面広告)
Googleの新聞広告レビュー
「小さなビジネス」が、
町のこれからをつくっていく。という見出しのもと、
そして、変化が起きている。否応なく、柔軟に。と、次行から続く「レストランのテイクアウト」「工場のオンライン」「家で受けられるヨガのレッスン」を例に、コロナ禍で起きているさまざまな変化を列挙しながら、
これから、新しい日々が現れてくる。それは実はもう、はじまっている。と、冷静に明言し、
「小さなビジネス」が、もっともっと多様につながりあう町で。
これからをつくろう。Googleでもっと。と、冒頭の見出しを回収するように、結んでいます。
Googleのキーワードは「これからをつくる」
コロナ禍で生まれた変化を小さな日常を例に挙げながら、そんな小さな日常に息づく、小さなビジネスの一つひとつが町をつなぎ、「これからをつくる」というメッセージとともに、新しい日々の現れを明言しているところに、数々の革新的な「これから」をつくってきた、Googleらしさがうかがえます。
コピーライティング的には、先のトヨタにもあった「町」という表記と、Googleが訴える「小さなビジネス」との相性のよさを感じさせる点。また、「作る」「創る」「造る」とすべてのイメージを印象づけられるからなのか、「つくる」とひらいた表記には、何か意図があるのかもしれません。
各社からうかがえるニューノーマルなキーワード群
➊ 変化(ENEOS)
➋ 進む(トヨタ)
➌ 新しい日々へ(積水ハウス)
➍ 心の距離(ロッテ)
➎ 次の挑戦(ソニー生命)
➏ 進化し続ける(クレハ)
➐ これからをつくる(Google)
こうして各社のキーワードを並べてみると、どの企業の広告にも、どこか通底するメッセージが感じられます。
「変化」「進む」「新しい」「距離感」「挑戦」「進化」、そして「これから」。
いずれも目新しい文言ではないけれど、アフターコロナ、ウィズコロナの社会では、これらのコトバが、ニューノーマルなコミュニケーションスタイルのキーワードとして、今後ますます多用されていくのかもしれません、ちょっとおおげさかもですけど。
アノ偉人の格言はコロナ禍の予言だったのか?
「生き残る種というのは、最も強いものでもなければ、最も知的なものでもない。最も変化に適応できる種が生き残るのだ」※参考:20年6月4日(木)/ITmediaビジネスオンライン/「強い会社」に変わる仕組み。新型コロナで問われる変化適応力
「進化論」で知られるチャールズ・ダーウィンが遺したとされる格言は、先の各企業が使っていたキーワード群と、どこか相通じるようなメッセージを感じるのは、当方だけでしょうか。
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